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ワクスタ

ワクスタとは

政治学とは、みんなで物事をより良い方法で決めるということ。大学時代の学びを今日まで活かし続けている大学教授のはなし。

Category | 大学教授・教師・研究職

2018.2.5

松田憲忠さん
青山学院大学法学部教授。政治学者。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。その後、早稲田大学にて修士課程・博士課程(政治学)を修了。専門領域はガバナンス・システムにおける政治過程、政治学理論・政策過程理論の科学哲学的分析、税制の政治学。著書に『社会科学のための計量分析入門―データから政策を考える』共編著:松田憲忠・竹田憲史編(ミネルヴァ書房、2012年)、『現代日本の政治―政治過程の理論と実際』共編著:岡田浩・松田憲忠編(ミネルヴァ書房、2009年)がある。

「なるほど!」という感覚の積み重ねが、僕を突き動かした。

数ある学科の中から政治学科を選択されたきっかけ、また早稲田大学に進学されたきっかけを教えてください。

中学三年生のとき、公民の授業での憲法や経済の話がすごく面白いと感じ、もっと勉強したいと思ったのが最初のきっかけです。

 

それでも、大学進学のときは、明確に政治学科に行きたいと考えていたわけではないのですが、担任の先生から、「早稲田の政治学科に行けるんじゃない?」と言ってもらい、進学を決めました。

 

大学時代に印象に残っているカリキュラムや授業は何でしたか?

当時の政治経済学部は、政治も経済も関係なくどちらの科目も相互に履修できるカリキュラムでした。大学に入りたての頃は「テスト前に勉強する」スタイルでしたね(笑)。

 

大学に入って驚いたのが、僕が一年生の時に講義を担当していた先生の教える姿勢。「日々の研究のアウトプットを学生にどう伝えるか」と、苦闘しながら授業を作り上げていっているのを肌で感じました。高校までは指定された教科書に基づいた指導を受けてきたからか、この先生を見た時に、「大学の先生は、こんなにも『教えることそのもの』に試行錯誤するんだ!」と感激を覚えたのを今でも忘れられません。

 

授業で印象に残っているのは、一般教養科目の「心理学」かな。「第一印象が悪い人が少し良い事をすると、その人のイメージが格段に上がる」という実験結果があることを知って、「こんな事を検証している人がいるんだ!」と驚いたのを今でも覚えています。多分、自分の短い人生を振り返って「なるほど!」と思える感覚が多かったから面白かったんじゃないかな。

 

そんな僕に転機が訪れたのは3年生の時。今までは与えられた試験を受けるだけだったけど、何かについて勉強しなくちゃ、とふと気付いたんです。その時に思い出したのが、政治学原論の講義で先生が言っていた、『これからの政治学は「人の行動」に注目しなければならない』という言葉でした。心理学と政治学の融合、ここに自分が積極的に勉強できる題材があるかも!と思い、それに関連する内容のゼミに入りました。

 

小さな頃から気付いていた、「教える」ことの楽しさ。

先生の教える姿に注目する学生はそういないように感じるのですが、先生がそこに注目したのは何故ですか?

小さい頃からものを教える事が好きだったんです。小学生の時は弟に勉強を教えたり、算数が苦手な子に教えたりしていました。先生の教え方次第で勉強の苦手意識を持ってしまう事を克服したいと思っていたんですよね。

 

「どうやったら先生が教えきれなかった事を教えられるんだろう?」と考えて、自分が教える事でそれが叶った時はとても嬉しかった。先生の教え方を見るのが好きで、学校や塾の先生を専ら観察していた子ども時代でした(笑)。 いつしか、大学の先生になりたいと強く思うようになり、それ以外の職業に就く事は考えられなくなりました。

 

未来は選ぶものだ、と知った春。

大学卒業時、周りは企業に勤める人が大半だったと聞きましたが……先生はなぜ大学院への進学を決めたのでしょうか?

4年間のわずかな勉強量で「政治学科を出ました」とは、恥ずかしくて言えないと思ったんです。ふ抜けた生活で卒業してしまったら、政治学を語る資格もない、と(笑)。進学するのであれば、身近にいらっしゃった尊敬する大学の教授のようになりたいと思ったんです。

 

実は叔父が大学院進学ののちに博士号をとった人で。叔父の姿を幼い頃から見てきて、「大学のその先がある」とはうすうす理解していたんです。また、父からは「留学」の選択肢がある事も教わって。

 

「無限にある選択肢のほんの一つを選んだだけであって、正解の道は一つだけではない」という事がわかっていたからこそ、周囲を気にせず自分の行く道を選べたのかな、と思います。

違和感がもたらした、「原点に立ち返ること」の大切さ。

大学院にて修士課程を修了された後、博士課程の最中で米国・ピッツバーグ大学大学院に入学されました。留学生活で印象に残った出来事はありましたか?

アメリカの政治学は統計などを用いて科学的に法則を見つけ出すものが多くて。僕は小さい頃から数学が好きだったので留学当初は熱中していました。けれどだんだんと、データ分析だけに心酔するのは違うな、と違和感を感じるようになったんです。

 

帰国後、早稲田の指導教員にアメリカでの政治学の動きを整理して発表したところ、その先生に「政治学が何のためにあるのかわかっていないのではないか」と諭されたんです。「法則を発見できたとしても、その後どういう社会を作りたいのかまで考えなければならないんだ」と。ハッとしましたね。「どうあるべきか」という本質を忘れてはいけない。このひと言は今にも活きています。

 

アメリカで学んでみて、日本とどのような違いを先生は感じられましたか?

日本の大学院は、一言でいうと「放牧」。一方、アメリカはきっちりと指導される印象を受けました。決められたものより、自分が興味があるものを題材にした方が楽しいですよね。しかし、自由も度を越えると勉強したくなくなる。そういった意味で、アメリカのような指導体制の下で基礎から学べたのはとても良い経験だったと思います。

 

 

学問は、人生を切り抜けるためのチカラだ。

政治学で得た学びは、今の先生に活かされていると思いますか?

思います。例えば、会議や講義で議論をする場合がありますよね。そのような時に「どう進めていくのが良いんだろう?」という改善への道しるべとなるのが政治学であると僕は思います。「政治」と聞くと、どうしても議員がいて、国会があって……と考えがちだけど、簡単に言うと、人間の関わり合いの中に「社会」が生まれて、そこで物事を決めようぜとなった時に「政治」が誕生するんです。その決め方についての示唆を与えてくれるのが、政治学の知見なのです。

 

だから、多数決で物事を決める際に「多数決では拾えない意見もあるかもしれないから、もう少し他の意見も聞いてみようよ」と模索するうえで、政治学から学んだものが活かされていると思います。企業も「人の集まり」であるのだから、政治は起こり得る。ですから、政治のあるべき姿を模索し続けている政治学は、どんな分野に就職しても意味を持つ学問だと思います。

 

 

最後に、この記事を読んでいる学生にメッセージをお願いします!

今、大学の学びは「すぐ使える」実践性を求められているフェーズに入っています。でも僕は、実践的な事は就職先で学べば良いと思う。僕が考える「大学で学ぶ意味」は、「即時的な実践性のないものを学ぶ」事にあると考えています。

 

生きていくなかで、実践的な知識やスキルだけではうまくいかない場面は否が応でも出てきます。そんな時に、「学問」という、何万人の人が考え、吐き出してきた知見の数々が武器となって大いに役立つはずです。すぐには必要ないかもしれないけど、何か困った時に役に立つのが、どの分野であれ学問的なものの見方だと思います。大学生活のこの一瞬、ムダに思える事を知っておく事に意味があると僕は考えています。

阿久根 美咲

編集長見習い
阿久根 美咲

社会人一年生。初めての営業や地方出張生活の傍ら、ライターをしている。ミュージカルが何より大好き!

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