20代で2度、人生の大きな決断をした、有名予備校の講師の話。その1 | ワクスタ
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20代で2度、人生の大きな決断をした、有名予備校講師のはなし。その1

Category | 大学教授・教師・研究職

2018.4.17

田中結也さん。予備校日本史講師。
関西学院大学文学部史学科卒業。
同大学院文学研究科日本史学専修博士前期課程修了(同 後期課程退学)。
現在、日本史講師として西日本各地の予備校に出講中。
独特の切り口による解説は「大学入試に直結すると同時に歴史の理解が深まる」と
多くの受験生から強い支持を受けており、毎年全国の難関大学、有名大学に合格者を輩出。
講義以外にも模試作成やテキスト編集などにも携わり、大学受験業界で幅広く活動している。

歴史が持つ「因果関係」に惹かれた。

なぜ大学で日本史を専攻されたんですか?

高校生の頃から日本史という科目が好きだった、という一言に尽きますね。
きっかけは、当時学校で司馬遼太郎さんの書籍が流行っていて、私も読んでみたことです。
『太閤記』を読んだときは、羽柴秀吉が成り上がる姿に心を打たれました。
ただ、こうしたストーリーを読んで受ける感動は、一過性のものに過ぎませんでした。
というのも、「いつどこで生まれて、少年期はこんな性格で……」といった大河ドラマの序盤のようなストーリーは、どこか創作染みていて魅力を感じなかったんです。
それよりも私が興味を持ったのは、歴史事象の因果関係。
歴史的な出来事の「原因・背景・結果、その出来事で歴史がどう変わったか」という前と後ろの関係を考えることが好きでした。すべての事象には因果があり、連鎖的に繋がっているということを突き止めたかったんです。

 

因果関係に注目されていたんですね。「歴史」というと、世界史やアジア史などもありますが、その中でもなぜ「日本史」だったんですか?

日本史は原因・結果を研究する学問で、世界史は戦争や国盗りの過程を考えるものだと思っています。因果関係を追究する私にとっては、日本史の方が面白そうだと感じました。
また、私の高校では1回生は世界史・2回生は日本史・3回生は選択受験科目、という順番だったので、単純に勉強の繋がりがよかったということもありますね。

 

大学時代の周囲の方で、大きな影響を受けた方はいらっしゃいますか?

ゼミの教授には、少なからず影響を受けました。恩師と言える存在ですね。もともとこのゼミを選んだ理由は、一番人気が「なかった」から。みんな仲良しで楽しいだけ、というのはイヤで、先輩から一番厳しいと聞いていたこのゼミをあえて選びました。
恩師は奈良時代の政治史の研究者なのですが、たくさんいる研究者の中で唯一、『続日本紀』という資料を批判的に捉えた専門書を書いた方です。この専門書を読んだことで、私は物事を批判的に捉えるようになりました。

やりたいことは、やらなくてはいけないことをやり遂げた後に初めてできる。

では、印象に残っている講義は何でしょうか?

単位を取るのに苦労した、キリスト教・英語・中国語ですね。
中でも一番苦労したのはキリスト教。私の専門である日本史には、研究に歴史資料を用いる際、多方面からその正当性・妥当性を検討する「史料批判」という方法があります。聖書をその視点で読んでしまうと、メッセージが上手く頭に入ってこないんです……。結果、周りはみんな1回生で単位を取得したのに、私は4回生までかかりました。史料批判の精神が強すぎたんですかね(笑)。

聖書に書かれたことが事実か否か、というのは不毛な議論ですかね(笑)。英語や中国語では、どんなご苦労があったんですか?

私の学部は、この2つの語学が必修科目だったんです。「単位をとらないといけない」という義務感が先に来て、興味がなくなってしまったんだと思います。でも、やりたいことを突き詰めるだけでは見える世界が狭い。必修科目をやることで見えてくる、手に入る知識もあると思います。やっぱり、「やりたいことは、やらなくてはならないことをやり遂げた後に初めてできる」というのが現実ですよね。苦手だった語学ですが、中国語の授業で何度も行ったプレゼンテーションでは、前に出て話をすることを学びました。もうちょっと真面目に取り組めばよかったと反省しています……。今の学生の皆さんには、「何でこんなことをやらなくてはいけないんだ」ではなく、「これをやり遂げたら自分のやりたいことができるんだ」という信念を持って、乗り越えてほしいです。

課外活動は何かされていましたか?また、今学生に戻ったらどんなことをしたいですか?

学生時代、課外活動は特にしていませんでした。
いま学生に戻るとしたら「政治塾」に入ってみたいですね。様々な考え方をもつ政治家の方のお話をうかがえるのは、良い機会だと思います。教え子が現在大学で参加しているそうで、話を聞く度にうらやましく思っています。
それから、昔はなかった新しいアルバイトにも興味があります。海外の方に道案内をしたり、歴史を紹介したりするガイドなんて、面白そうですね。このアルバイトをしていたら、もう少し英語が好きになっていたかもしれません(笑)。

社会ではインプットだけでは足りない。アウトプットの延長にあるのは「お金を得ること」。

大学時代の学びの中で、キャリアにおいて重要なものは何だと思われますか?

アウトプットの力ですね。インプットばかりの人は、社会ではあまり役に立たないと思います。例えば、相手の矛盾を突くことができても、代案を出せなければ生産性は低いですよね。私はアウトプットの延長にあるのは「お金を得ること」だと考えています。インプットとは本来、自己満足なものです。そこで終わらないためには、ある程度人前で披露して、知識をお金に変えようという意識が必要だと思います。家庭教師や塾講師のアルバイトなどが、イメージしやすいでしょうか。

ではインプットについては、どんなことをしておくといいでしょうか?

インプットすること自体が重要ですね。仕事を始めるとなかなか時間が取れませんし、アウトプットする機会ばかりが多く、すぐにネタ切れになってしまいます。だから、大学在学中に可能な限りインプットすることをオススメします。
例えば、大学生活4年間(約1,500日)あれば、何百冊かの本を読むことができます。私自身、興味のある歴史関係の本は読み漁りましたが、あっという間に時間切れ。あの時に他の分野の知識もつけていれば、と後悔しています。大学時代のインプット量は、自分との戦いです。時間を有効活用して可能な限り色んな本を読んでおけば、仕事の幅も広がると思います。

読書はやはり大切ですよね。ですが最近、読書時間ゼロの大学生が過半数超、というデータも発表されました。読書に苦手意識を持つ学生に、何かアドバイスはありますか?

全て読まなくてもいい、ということですかね。私は本をよく買いますが、実はそのうち2割は読んでいません。「せっかく買ったのだから読まなきゃ」という考えは持たなくていいと思います。
読み始めたものも同じです。読み進めているうちに「なんか違う」とか「面白くない」と感じたら、そこでやめてしまうのも一つの選択肢だと思います。気負わず気楽に始めてみてはどうでしょうか。

かっこつけて表現するより、必死に投げかける方が相手に伝わる。

何度か行ったイタリア旅行は、良い経験になりました。アルバイト代で賄う貧乏旅行だったので、一人旅でも友人との旅でも買うのはいつも航空チケットだけ。そこから行き当たりばったりで数週間滞在しました。イタリア語も英語も日常会話程度しか出来なかったので、旅先では相当苦労しましたね。でもそのおかげで、「かっこつけて表現するよりも、必死になって投げかける方が相手に伝わる」ということに気づきました。それ以来、実力以上の自分を見せようとしなくなったことで、人前でも緊張せず自然体でいられるようになったことは大きな収穫です。

仕事を始めてから、「必死になって投げかける」ことが役立った場面はありますか?

役立つというよりは、実感することが多いですね。生徒に授業についてのアンケートを取ることがあるんですが、作りこんだ授業って評判が悪いんです。恐らく、練習した分スラスラと話していて、「ライブ感」が薄いからではないかと思います。授業は人対人のものなので、目の前で考えながら必死で伝えている方を、無意識に良いと思うのではないでしょうか。こちらとしては、家で黒板を使って考えたり、ビデオに撮ってみたり、色々試行錯誤しているので、少し悲しくもありますが(笑)。

「内定を取ること」が目的になっていた、就職活動。

いえ、大学3回生から4回生にかけて行いました。出版社、メーカー、外資系企業、旅行業など興味があった会社はひと通りまわりましたが、私の世代は就職氷河期だったこともあり、なかなか上手くいきませんでした。

受検された企業が日本史とは直結しないように思えますが、そこは切り離してお考えだったのでしょうか。

出版社は日本史が活かせると考えていましたが、その他は特になかったですね。周りも就活するのが当たり前でしたし、「働かないといけない」という使命感のような思いから就活をしていたと思います。最終的に内定をいただいた会社もありましたが、お断りして、大学院に進むことを決めました。

内定を辞退されて、進学を選んだんですね!どんな想いで決断されたんですか?

就活中の自分は自分らしくなかった、と気付いたことが大きいです。周りの動向ばかり気にして、「どんな仕事がしたいか」より「内定を取ること」を第一に考えていました。それに気付いたのは、内定をいただいた会社に入社することを考えたとき。将来像がなんとなく想像できてしまうのはつまらなく感じ、やっぱり自分らしく、自分がやりたいことができる道に進もうと思い、決断しました。

清水 真理

デスク
清水 真理

福岡県出身。都内の短大を卒業後、社員20余名の採用コンサルティング会社に入社。幕末史とシャーロックホームズを愛する、社会人6年目。

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