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ワクスタ

ワクスタとは

LGBTとして生きるのに、まだ社会の器は狭い。 情報をただ流すのではなく、コミュニティをつくって発信すべき、と学ぶ日々のはなし。

Category | 起業家

2018.6.8

星賢人さん
立教大学法学部法学科よりさらに進学し、東京大学大学院情報学環教育部 を修了。2016年の在学中に姉弟で『JobRainbow』を設立。「すべてのLGBTが自分らしく働ける職場と出会えること」を目指し採用・就職サポートを行っている。

特に目標を立てることなく進学した後悔が、
その後の自分を奮い立たせた。

立教大学に進学するきっかけはなんでしたか?

附属高校に通っていたので、成績順で法学部を選択して進学しました。正直、あの時は行けるところに行ければいいやと思っていたんです。法学部を選んだのも、父が弁護士で、姉がロースクールに通っていたから、なんとなくで。

学び始めてからも法学に興味を持つことができず、附属あがりだから周りの人たちも中学の頃からずーっと変わっていなかったので、入っても楽しくなくて(笑)。

なので、学外活動のNPOの方に積極的に参加していたんです。

高校生に向けたキャリア支援として、「どんな大人になりたいのかで、大学を選ぼう」というメッセージを伝える活動をしていたのですが、肝心の自分がまったくそんなイメージを持って進学先を選んでいなかったことが引っ掛かっていて……。

自分も好きなことを学ぶために、自分の居場所を探したいと思うようになりました。



そんな時、姉から「面白い場所がある」と言われて紹介してもらったのが、東京大学大学院情報学環教育部。

文理関係なく情報について学べる場所だと聞いて、気になり始めたんです。


なぜ、情報について学びたいと思っていたんでしょうか?

立教大学で、LGBTサークルの代表をやっていたんです。

そこでトランスジェンダーの先輩と出会って。その方が就活で、『君みたいな人はうちの会社にはいないので帰ってください』と言われ就職を諦めている様子を目の当たりにしました。



自分に正直に生きているだけなのに、働く場所が自由に選べない悲しさ。

それって、LGBTが社会的にまだまだ理解されていない、情報が正しく社会に伝えられていないからじゃないかと思ったんです。



でも、LGBTの情報って、どうやって手に入れればいいのか?

LGBTを受け入れる会社があったとして、どこで公表すればいいのか?

働く場所を探すLGBTたちが、どこを見れば企業が見つかるのか?



テレビでは昔から「オカマ」や「おねえ」「オナベ」などと公表する人たちが笑いの対象にされています。その結果、子どものころから刷り込みのように『カミングアウトしてはいけないもの』『笑っていいもの』と認識されています。でもこれは、人を傷つけようという悪意があって起きたことではありません。みんなが無意識にメディアから情報を獲得した結果なんです。だから、それが当たり前、という環境自体に問題があるんじゃないかなと思いました。



もっと違うやり方で、LGBTの人々について知ってほしい。それを学ぶために、まずは自分自身が「情報がどのように社会に広がり、人々の行動を変えていくのか」をしっかり学びたかったんです。


どこで発信すればいいのかわからない。どこで知ればいいのかわからない。そのすれ違いを、コミュニティを作ることによって改善したいと思い立った学生時代。

実際、情報学環教育部ではどのような勉強をされていたんですか?

情報学環教育部は、東京大学新聞研究所を前身としており、マスメディアにおける研究が非常に進んでいます。



日本にLGBTという言葉が普及したのは、2010年ごろ。

けれど、そこで初めてLGBTという存在が社会に認知されたのではなく、特に同性愛といった概念は「男色」などといった形で古くから存在していたんです。それがどのように人々や文化に受容されていたのか、文献などで情報を集めました。


在学中にJobRainbowを立ち上げようと思ったきっかけはなんですか?

社会の中での情報の流れについて学んだことは、大きかったと思います。

現代の私たちが、インターネットを使って情報を得るのと同じように、昔は『コミュニティ』や『うわさ』をメディアとして、人々は情報を手に入れていました。

そういう歴史を知っていくと、時代が違っても人間の本質は変わらないんだなと思うようになりました。だから、人間自体の在り方や、提供しようとする価値観も変える必要はないんじゃないかと気づいたんです。



信頼できる仲間と一緒なら、手に入れた情報を使って、LGBTという存在の認知を高めることができる。

そうしてたどり着いたのが、アライ(LGBTの理解者)とLGBTの当事者に向けた『長屋』のようなコミュニティを作るという答え。

それを実現するために、特にLGBTとLGBTフレンドリーな企業とを繋げるメディアであり、コミュニティとしても機能する『JobRainbow』という場所をインターネット上につくったんです。


勉強もそうですが、行動するためには『出会い』も重要ですよね。

そうですね。

自分が今代表をしていることもあって、1日に何十人もの初対面の人とお話しする機会があります。

採用のサポートをしていることもあり、様々な業界、幅広い年齢の人たちと会っていると、世界は広いんだなあと実感します。



最近選ばれた孫正義育英財団(孫正義の私財によって立ち上げられた、25歳以下の若手人材を支援する公益財団法人)には、小学生の子もいます。

そこで話をしていて驚いたのは、高校生で1億円の資金調達をして会社を運営している子がいたこと。小学生の頃からインターンをしていたり、プログラミングの国際大会に出場するような経験をもっている子で。

与えられた場所でなんとなく過ごしているだけでは、出会えない子だなあと思いました。



ただ、そういうことをやりたいと思っても、できる環境って限られている気もするんです。

自分の周りの起業した人たちも、もともと裕福な家庭に生まれていたり、進学ができる環境を持っている人。

奨学金などのお金を借りて進学して、働き始めたら親へ援助もしなくてはいけない、という切迫した状況の中で、起業しようと踏み出すことは難しいのが現実です。

そういう経済格差を全くなくすことは難しくても、やりたい、と思ったことへの実現をこの財団のような存在がサポートすることができれば、もっと面白いものが世の中に発信していけるのになあと思いますね。

目標があるなら、今日から仕事を始めたっていい。でも、進学も視野を広めるひとつの貴重な機会。

もし、高校時代に戻れるとしたら、星さんはどんなところで勉強をしたいですか?

今は明確な目標があるので、もし戻れたとしても、すぐに仕事を始めることを選ぶと思います。

小学生の時点で起業しようとする子がいるように、学校というコミュニティに頼らずに動いて、もっともっと世界を広げていきたいです。

今、高校生も、やっぱり進学を選ばずに活動をすべきなんでしょうか?

いえ、一概にそうとも言えません。

僕も、高校生の時は自分が何をしたいか明確にわかっていなくて、結局よくわからないまま進学を選択していましたから。

でも、その時に急に大学に行かずに働こうと思っても、今のようにはならなかったと思います。



進路選択の上で、大学はひとつの選択肢でしかない。

けれど、まだ自分が何をしたいかが明確にわかっていない段階では、それを探すために自分と向き合う猶予が必要だと思うんです。


大学で学んだり、少しでも広い世界を見るために色々な人に会いに行ったり。

目標を達成するためにどんなやり方をすればいいのかを考える期間として、まだ夢や目的が見つかっていない子たちこそ、進学する意義があるんじゃないでしょうか。

実際問題、社会にはまだ、「学歴」という物差しで若い人を判断するところもあります。

何か動き出したい、と思ったときにそのような壁にぶつかって動けなくなってしまうのはもったいない。だからこそ、まず進学してみる。遠回りかもしれませんが、未来の自分への投資になりうるはずです。

皐月 彩

ライター
皐月 彩

日本大学芸術学部映画学科 2017年卒。 エジプト出身。円谷プロダクション製作の『ウルトラマンジード』の仕上げ進行スタッフを経て、現在はフリーランスの脚本家として映画・アニメ・ドラマの制作にかかわる。

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