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ワクスタとは

連載2「ハートは熱く、頭脳はクールに」何となく進んだ法学部でたくさんのものを手に入れたはなし。

Category | 先輩社会人

2018.9.10

阿久根美咲(ワクスタ編集部)
千葉県出身。中学・高校・大学の7年間、合唱やゴスペルに熱中する青春時代を過ごしました。
2018年3月に青山学院大学法学部(専攻:著作権法)を卒業したのち、同年4月から都内の新卒採用支援会社で営業をしています。

長く辛かった大学受験期間を終えて、私はついに第2志望の大学の法学部に入学する事になった。

都会のど真ん中。喧噪の中にあるはずなのに、緑が多く森のような雰囲気がある。
大きな門をくぐりまっすぐ歩いていくと、つきあたりには古くから大切にされている建物が幾つかそっと立っていた。

大学の雰囲気も素敵だし、(とりあえず決めただけだけど)目指していた法学部に入れた!
私は喜びでいっぱいだった。

「これで楽しい大学生活が始まるぞー!!!!」

しかし、現実は甘くなかった。
私(と私の周りの新入生たち)は、入学早々「法学」という学問に大きなショックを受ける事となった。

「公共の福祉」「心裡留保」「未必の故意」…
今までの人生で触れた事もない言葉が一気に頭の中に押し寄せてくる。
小さな六法全書をリュックに入れて、重い教科書を持ちながら大学に通う日々が始まった。

印象に残っている授業というと、大学一年の「法学入門」。
事件の概要から判決文まで、びっしりと印刷された3枚のプリントを手に持ち、教授がこう言った。
「論点を探すんだ。ずっと解いていけば、いずれはすぐに分かるようになる。とにかく、自分で論点を探してごらん。」
論点とは言わずもがな、「人によって解釈(学説)が分かれそうなところ」なのだが、正確に抽出するのは意外と難しい。
時に、自分の「当たり前」を疑わないと見えてこない視点があるのだから。

当時は幾つもの情報から、それっぽいものを抽出する事で精いっぱい。
出来ている気がしないし、試験の出来もよく分からない……。
けれどもテスト前には論点とその定義をインプットし、1000字程度の解答を2~3つ頭に叩き込む、という日々を送っていた。

しかしどんなことでも、続けていれば慣れるもの。私にも、段々と余裕が生まれてきた。
二年生になると、テストで分からない箇所が出てきても「それっぽい表現で」解答をしてその場をやり過ごす事も出来るようになった。

三年生になり、自分の専攻である著作権法の講義を受けていた時のこと。
事例問題の答案の解説の回で、教授がこのような事を言った。

「長い文章でだらだらと取り繕うな。短い文章で表現できるのが『良い回答』なんだ。」

やり過ごす事に慣れていた私は思わずはっとした。
教授には全てお見通しだったのだ。
この日をきっかけに「一番伝えたい言葉は、端的に伝えよう」と努力するようになり、徐々に私は変わっていった。
教授には卒業論文をはじめとしてとてもお世話になったが、「シンプルな表現で物事を伝える」という事を一番教えてくれたのは、この教授だったように思う。

その他の先生方も沢山の事を教えて下さった。
立場の違う人に対し客観的に、対等に向き合う為には何をすれば良いのか。意見の違う人同士で尊重し合うにはどのようにすれば良いのか。
両指で数えきれないくらいの物事を教わったが、教授のみなさんが口をそろえて言うある言葉があった。

「ハートは熱く、頭脳はクールに。」

思いを伝える為の土壌には、必ず物事に対する深い知識や洞察力が必要だということ。
知識や洞察力、一番大切な事を見抜く力があってはじめて、熱い思いが「本物」になるということ。

大学を卒業した今、私は都内の採用支援会社で営業をしている。
四年間で培った「論点を探す」という作業は
営業としてお客様とお話を聞く際のアンカーとして、
揺るがない中心軸を築き上げてくれると、そう信じている。

論点を抽出するとはつまり、「物事の中心を見極める」ということ。
末端に目を奪われるのではなく、一番大切な中心部分を見つけ出すという事と同じ。

「正義とは」「悪事とは」を、たった一つの「法律」という答えでズバっと裁く。
私は法学をそのような物であると認識していたが、大きな間違いだった。
あくまでも、最後の審判をするのは人間なのだ。
物事の中心を見極め、法律を使って考える。それこそ、「法学」だった。

「逃げの一手」で選択した法学部での学びは、私に未来を切り拓くための鍵をくれた。

入学時点で未来なんか決まってなくても良い。なんなら就活をはじめてから、未来を探し始めても良い。
ただ、未来の「鍵」を探すために、大学に入るのも、悪くない。

阿久根 美咲

編集長見習い
阿久根 美咲

社会人一年生。初めての営業や地方出張生活の傍ら、ライターをしている。ミュージカルが何より大好き!

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