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ワクスタ

ワクスタとは

連載2「単位を取る」よりも「何を勉強したいか」の方が大切だった大学生活。

皐月彩(ワクスタ・ライター)
東京大学教育学部附属中等教育学校卒業後、日本大学芸術学部映画学科に入学。
2017年卒で円谷プロダクションに業務委託として参加し、現在フリーの脚本家として活動中。代表作は『セブンティーンモータース』『ウルトラマンR/B』。

作家になりたい自分には、なにもかもが勉強。

「妄想だけでは作品にできない。自分で体験して初めて描ける。」と、言われたことがあります。
実際自分が一生懸命想像して母親の話を書いても、やっぱり、なんで身を挺してまで守るほど子どもを愛しているのかとか、今の私は母が一番好きだけど、それを塗り替えるくらい愛せるだろうかと、想像の至らない箇所がたくさんあります。

端的に言えば「書けない」し、人からは「書けていない」と言われることもあります。

だから逆に、私は祖母と暮らしていてほぼ毎日喧嘩をするので「おばあちゃんなんか大嫌い!」って言っている人の気持ちは誰よりもちゃんと書けるつもりだし、友だちをつくるのが得意でないから、言いようのない「同級生たちへの恐怖心」みたいなものは分かる。

だからこそ、大学生活を通して、作家の仕事の技術だけじゃなく、色々なことを経験したいと思っていました。

友だちを作るのも、彼氏を作るのも(彼女でも可)、サークルに入ってみるのも(すぐ辞めたけど)、バイトをするのも、他の学科の授業を受けてみるのも、全部、いつか自分が誰かの「共感」を描くための経験として挑んでいました。

日本大学芸術学部デザイン学科にあった、理系の授業。

私が所属していたのは映画学科。
でも、必修にかぶっていなければ他学科の授業も受けられたので、私はデザイン学科と文芸学科の授業もちょくちょく受けに行っていました。

そういう外部授業を受けに行く子は、多くなかったです。
芸術学部は課題がたくさんあるし、その時間を使って映画や演劇を観たい、とか、バイトしなくちゃいけない、という子もたくさんいたので、「当たり前に誰でも受けに行く」という雰囲気ではありませんでした。

バイトの合間を縫って、朝早起きしてなんとか色々な授業を受けに行ったけど、「聴講」なので単位もでないんですよね。それでも、やっぱり「経験」をいっぱいしたかったので、私は聴講に夢中になっていました。

特に面白かったのが、デザイン学科の授業。
授業名は忘れてしまったけれど、講師は当時上野の国立科学博物館のキュレーションを担当していた方で、日芸デザイン学科の卒業生。

授業では、世界の博物館で芸術家たちが生物や自然、美術たちから何を学び、どうデザインに落とし込んでいったのかを、大量の写真と模型、標本などを用いて見せてくれました。

粘菌という単細胞なのに、何メートルも大きくなってしまう生物を観察する、なんて、ちょっと芸術学部からは離れて感じますよね。
当時私もまったく同じことを感じていて、「いつもは美術云々とかの話しかないのに、おもしろい!」とおおはしゃぎ。

デザインや美術には自然や科学、生物の要素を組み込んで表現されているものがたくさんあるんですよね。
私がやっている映画だって、風や光、水がどのように動いてどのように作用するのかを知っているだけで、撮れる映像がどんどん開拓されていく。

芸術学部らしくないけど、一番芸術らしい、「芸術をやるには、そもそもの物事の原理を知ってなくちゃ!」と感じさせてくれた授業でした。

日本大学芸術学部は、「知識欲」を満たすには最高の場所だと思う。

日芸って、ぼーっとしてても多分、皆卒業できちゃう学校だと思います。
単位を取るのもそんなに大変じゃない。課題さえ出してれば、テストさえ受けちゃえば大抵卒業要件は達成できるんです。

でも、それって高い学費を払ってやることじゃないんじゃない? っていうのが私の頭には常にあって。

大学内には、図書館や作品展示室やアーカイブがたくさんある。
それは学費さえ払っていれば毎日「タダ」で使えます。

図書館にはフィルムもレーザーディスクもVHSもDVDもBlu-rayもある。
私が個人的にお気に入りだったのは「辞書」のコーナー。方言辞書や食べ物のおいしさをどう表現するかが書いてある辞書、もう死語になった言葉をあつめている辞書とか、普通に生活していたら絶対出会えなかったものにたくさん出会えました。

デザイン、演劇、文芸、音楽、放送、美術、写真などの他の学部のものだって、触れられるものは頼めばなんだって教えてもらえるし、実際に使ってみることもできる。
手を挙げれば学びは自由にさせてもらえました。その辺、うるさいこと言わない。

だからこそ、大事なのは「自分で何を勝ち取りたいのか認識して、行動すること」だったと思います。
教えてくれるだろう、なんかできるだろうでは、4年はあっという間に終わります。
いい意味で「本気」の子が楽しく通える日芸。私もできれば、もう一回通ってもっといろんなことを勉強したいなあ、なんて思ってます。

皐月 彩

ライター
皐月 彩

日本大学芸術学部映画学科 2017年卒。 エジプト出身。円谷プロダクション製作の『ウルトラマンジード』の仕上げ進行スタッフを経て、現在はフリーランスの脚本家として映画・アニメ・ドラマの制作にかかわる。

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