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ワクスタ

ワクスタとは

連載3 学生のうちだからこそ、自分の目標と関係のない人に、どんどん会え。自分を疑え。

皐月彩(ワクスタ・ライター)
東京大学教育学部附属中等教育学校卒業後、日本大学芸術学部映画学科に入学。
2017年卒で円谷プロダクションに業務委託として参加し、現在フリーの脚本家として活動中。代表作は『セブンティーンモータース』『ウルトラマンR/B』。

学生に面白い人は、いない。



今回は、学校のカリキュラムから少し抜けて、学生時代日頃意識すべきだったなあと思うことについて話したいと思います。

私は今、100×10チャレンジという活動(社会人100人に訪問するインターン)の受け入れ先社会人になっています。
私を訪問する学生の多くは、「個人事業主と話をする機会はあまりないから、聴きに来ました」みたいな人。
フリーランスだから固定の事務所は持ち合わせていないため、だいたいは仕事の合間に降り立つ駅の喫茶店などで待ち合わせをさせてもらうことが多いです。

毎回おもしろいほど、「今まで会った学生で面白い人はいますか」と聞かれるけれど、正直なところ、そういう人にはまだひとりも会えていません。
たぶん、まだ自分も大学を出て間もないし、価値観で驚かされるということは少ない。学生たちが日々過ごして、「自分は充実している」「他の学生とは違うことをしている」と話してくれることも、想定内の話にすぎません。

逆に、学生が来るまで仕事をしながら待つ間、喫茶店で隣の席に座った人に驚かされることはあります。

大阪に某有名アーティストを呼んで、大きなライブをやろうと打合せしている人たち。
どうやら彼女が浮気したらしいのに、なぜか彼氏の方が「別れないで」とすがって泣いているカップル。
営業成績を「ノリ」と「ごまかし」を駆使してとってこいと、後輩に教えているどや顔の社会人など。

仕事柄、人と会うことはあまり多くありません。
打ち合わせで会うのも、プロデューサーと監督くらいのもので、あとは原稿をひたすら書くとなると、自分の業界以外の人と話をする機会は少ない。
だから、こういう「無意識の出会い」が、私に驚きをくれるんです。

話もしたことのない人の、仕事や生活を知るべき理由。

できれば普段なら避けたい人、全然話が面白くない人でも、他人だとものすごく興味深く耳を傾けられます。
喫茶店の隣の席はまるで劇場のように、私の知らない世界について語っている。聞かれているなんて知らない感じで。

「この人すごい」と思っている人は、そのオーラに圧倒されて、どういう人間かを注視する余裕が生まれません。すごい話をしてくれていても「ほえ~」と、どこか他人事として「この人はすごいなあ」で完結してしまい、自分がどうやってその人のような技術を身に着けるかというところまで考えが及ばないことが多いです。
私の考えは、「それなら逆に、興味のない人に会う方がいいんじゃないか?」ということです(興味のない人イコール魅力のない人というわけではないですし)。

学生時代は短いです。そもそも4年しかないのに、多くの人が自分の将来について考え始めるのは、就職活動が始まる直前。
そんな短期間で、自分の目標の場所ばかり見ていたら、本当に自分が目標にふさわしい人間なのかなんてわかるはずがありません。

いまの目標が、自分にとってふさわしいか判断するための方法。
それが、「別の世界に心惹かれるものはないか探すこと」です。

運命は街中に転がっている。

いま皆さんが「好きなもの、なりたいもの」と思っているものは、20年そこそこ(さらに言えば、仕事を意識したほんの数年)という少ない時間と経験の中で、たまたま魅力的に見えたものに過ぎないことを意識しなくてはいけません。
皆さんの知らない世界は、まだまだ、喫茶店の隣に座る人たちの数だけ転がっているんです。
だから、目標ばかり見てはいけない。出会おう、自分の興味のなかった世界と。そして、色んな世界があることを知って初めて、本当に目標にすべきものが見えてきます。

色んな世界を知った上で、やっぱり最初の目標が一番魅力的なら、そこを目指せばいい。
比較検討したことで、更に愛は深まっているはずです。
何か新しい道を見つけたなら、そこに向かってやるべきことを考えればいい。
仕事を始めた後でやっぱり違ったと悩む手間が一つ減るんですから。
それが運命というものじゃないでしょうか。転がっている世界に気付けるか。運命は、気づかなければ街に放置され、いつの間にか消えていく。
運命は、街中に転がっているものだと思います。

自分が気にしたことのなかった業界の人の話を聞いてみる。
自分が今まで話したことのなかった大人に話しかけてみる。
憧れではなく、「ひょんなきっかけ」を大切にしてみる。
「盗み聞き」の機会があれば、100%聴覚をとぎすませて様子を見てみる。

人生において「やらなきゃいけないこと」が最も少ない、学生のうちに、これらをやり続けてみてください。
そしたら多分、「出会った学生の中で面白いと思った人はいますか?」という質問は思いつかなくなるはずです。
社会には、「学生」や「社会人」なんてカテゴリーが不要なくらい、もっともっと興味深い世界が広がっているから。

皐月 彩

ライター
皐月 彩

日本大学芸術学部映画学科 2017年卒。 エジプト出身。円谷プロダクション製作の『ウルトラマンジード』の仕上げ進行スタッフを経て、現在はフリーランスの脚本家として映画・アニメ・ドラマの制作にかかわる。

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